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大学の生き残り作戦

私の勤務する大学で、学生の定着率を高めるための学内シンポジウムが開かれ、教・職員が参加して活発な議論が交わされました。大学に入学した学生は、授業についていけない、授業の内容が期待したものではなかった、仕事との両立がうまくいかない、目的を失った、学習環境が良くない、施設が良くない、授業料が払えなくなったなど、様々な理由で大学を去っていきます。

大学にとっての一番の脅威は、学生に他の大学に転籍されてしまうこと。オーストラリアでは転籍はめずらしくなく、今の大学が気に入らなければ気軽に他の大学を移って行きます。大事なのは大学の名前でなく、大学で何を学ぶかだからです。学生を奪われることは大学にとって財務的な損失になるばかりでなく、穴を埋めるためにまた入学選抜をしなくてはなりません。また公立大学の収入源は政府からの補助金が大きな位置を占めますが、政府は大学の業績をいろいろな指標を使って常に監視しており、業績が下がると補助金が減らされてしまうのです。そして定着率も重要な業績指標の一つ。この指標は世界中で大学を評価するときの指標の一つとしても使われています。日本の大学生は転籍や退学が少ないためか、日本では重要課題とはなっていないようですが、university retention, student retention などのキーワードでウェブを検索すると山のように記事がでてきて、学生を繋ぎとめておくことは世界の大学の共通の関心ごとということがわかります。

議論されたのは、学生との接点を増やしたりアンケートを頻繁に行ったりすることによって学生に関するデータを集め、満足度を常に計測してドロップアウトの兆候を早期発見し、対策を取ることの重要性。そして授業の質を高めるのはもちろんのこと、オリエンテーション、カウンセリング、教授と学生のコミュニケーションを増やすなどのサポート体制を充実させたり、授業以外の大学コミュニティへの参加を促します。学生にとって当たり前のコミュニケーションツールになっているソーシャルメディアやマルチメディアの活用事例も紹介されました。

こういうことが真剣に議論されることの背景には、大学が厳しい競争にさらされているということがあると思います。特に留学生が三分の一を占める私の大学のように世界中から学生を集めている大学では、競争相手は国内だけはなく世界の大学です。学生や教授もまた競争にさらされています。就職の際には大学で何を学んだかが企業に厳しく問われるので、授業料に見合ったものを与えてくれない大学、自分にとって役にたたない大学はお払い箱なのです。教授も、授業の質が悪いと学生に評価されれば居場所はありません。役にたたないつまらない授業をいつまでも続けながら大学に居座るのは不可能なのです。

日本とまったく違うのは、大学だけでなく、教授、学生も常に競争にさらされているということ、それに対して日本の大学、教授、学生は温室の中で守られているということ。世界で勝負することを放棄した大学は少子化が進む中で競争力を保つことはできず、伝統的な日本企業の望む学生になることに専念している学生は自らを高める必要はありません。グローバル競争にさらされるビジネス環境のもとで、競争原理が働かない業界が衰退するのは他の業界を見ても一目瞭然ですが、日本の大学が今その存在意義を問われているのは必然だと思います。

これは行きつく所は「日本の若者はなぜ留学しないのか」にも書いたように、日本の企業が社員になる学生に対して大学で学ぶ専門能力を求めていないということ、そして終身雇用制が過去の物になった今でも、相変わらず新卒一括採用を続けているということに起因します。必要な人材を見分ける能力を持たない日本企業のこの習慣は、日本の人材の流動化をさまたげ、結局は必要な能力を持つ人材を必要な時に確保することが困難な状態に自らを陥れます。グローバルで勝負しなくてはならなくなった企業は自ら首を絞めているだけでなく、同じくグローバルでの存在意義を問われている大学の競争力をも奪っています。

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divayoshiko

Author:divayoshiko
よりよい生活と仕事環境を求めて、日本の会社を辞めてオーストラリアに移住しました。IT技術者として生活を確立するまでの様子、日々の生活や仕事のこと、現地情報、オーストラリアや日本について感じることなどをつづっています。メルボルン在住。
Twitter @divayoshiko

これまでの歩み
2009年
4月  技術独立ビザで永住権取得
2010年
1月  東京からブリスベンに移住
2月  シドニーに移住
4月  ブリスベンに移住
5-6月 メルボルンに長期出張
2014年
2月  メルボルンに移住

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