OECDのBetter Life Index(より良い暮らし指標)が発表されました。これは、住居、収入、仕事、教育、健康などさまざまな指標でOECD諸国の生活の質を比較するものです。オーストラリアは34カ国中二年連続一位。この裏にあるのは、景気の良さ、高い就業率、高い賃金、ワークライフバランス、健康、教育程度の高さ、生活環境の良さなどで、これについてはWall Street Journalが
記事 の中で解説しています。
景気低迷する他の先進諸国を差し置いて経済が安定しているのは、近年の採鉱景気のおかげ。国の主産業である鉱業は、中国の急成長と共に今後しばらくは成長が見込まれています。私の住むクイーンズランド州と西オーストラリア州は特に鉱業が盛ん。今は需要に人材の供給が追い付かず、鉱業会社は失業者が多いアメリカまで飛んで行って技術者を確保している状態で、国内の労組から反発を食らっているほどです。この成長は鉱業会社だけでなく周辺産業にも影響を及ぼし、私のいるIT産業でも、特に成長が目覚ましい西オーストラリア州の州都のパースでは仕事の口が多いです。オーストラリアの失業率は世界金融危機の後は5%台を保っていましたが、最近5%を切りました。これは他の欧米諸国に比べると目立つ数字です。
でもいい話ばかりではありません。欧米日の低迷はオーストラリアにとっても不安材料だし、年々上がる物価は私たちの生活にとって負担になります。小売業はお客を海外の安いネットショッピングに取られて苦戦中。最近の豪ドル高で輸出産業の製造業や観光業も苦しい戦いです。先日、七月から始まる来年度の国家予算が発表されましたが、財務大臣は財政を黒字に戻すのは比較的余裕のある今のうちだとは鼻息を荒くしていて、来年度中に黒字にするため、国民にも負担を求めています。結果として税金が上がったり国からの補助が減って可処分所得が減る傾向があります。他国と比べて生活の質は高いにもかかわらず、国民の満足度はそれほどでもないという調査結果も、もしかするとこの辺から来るのかもしれません。「ひぇーまたかぁ、勘弁してよー、でもまあ仕方がないか。ブツブツ・・」といった感じかな。それでも、バブル経済時から不良債権処理を先延ばしして失われた十年に突入し、今でも債務を増やし続けている日本を見ている私としては、余裕のあるうちにちょっと無理をしてでも借金を返しておくのはごくまともな国の運営方法だと思います。国の将来のために税金や電気料金の値上げするというと、国民からすさまじい抵抗にあう日本は大変です。OECD平均56%に比べ、オーストラリアの国民の71%は政府を信頼しているというのも特筆すべきことだと思います。
オーストラリアの男性は一日3時間も家事に時間を割いているという調査結果にはびっくりしました。確かに日曜大工をしたり庭の手入れをしたり育児に参加したりと、よくやっているなあと思います。これも仕事より自分の人生や家族が大切という社会通念や労働環境の良さが影響していると思います。
かなり昔に移住した人に「今頃オーストラリアに来て何かいいことあるの?」とまじめな顔で聞かれてびっくりしたことがあります。オーストラリアは近年まで絶好調な時代が続いて、物価は安く、不動産を買えば値上がりし、銀行にお金を預ければ金利は8%ぐらいでどんどん貯金は増え、年金もがっつりもらえ・・・というなんとも幸せな時代だったそう。昔からいる人からすると今なんてどこがいいの?って感じなのかもしれませんが、WSJの記事にもあるように、この「ラッキー・カントリー」は世界中から移民を引きつけています。確かに他国から来た者から見ると、幸せな国だなあと思います。結局何と比較するかの問題で、オーストラリアも何もかもバラ色ってわけじゃないんだけど、今は他の先進諸国が悪すぎるので相対的によくなっているのかもしれません。しかし他国の混迷ぶりをよそにこれだけ我が道を行けるというのは、やはり資源国の強みだと思います。
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