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世界に取り残される日本の多重国籍制度

青色発光ダイオードを発明した中村修二博士他二名の日本人がノーベル物理学賞を受賞しました。日本のメディアは日本人が三人と発表しましたが、世界のメディアは日本人が二人、アメリカ人が一人と書いています。中村氏はアメリカ国籍を持っており、日本の国籍を放棄しなければならないので、日本人が三人という記述は間違いということになります。世界で中村博士がアメリカ人と認識されてしまうのは、日本が成人の複数国籍を認めていないからです。

多くの日本人は、国籍という概念をあまり理解していません。「日本に生まれ、日本語を話し、外見が日本人に見えれば日本人だ」ぐらいの感覚でしょう。国籍とは個人がどこの国に所属し、どこの国に心理的に帰属するかというようなあいまいな印象しかないようです。日本人は生まれてからずっと日本を出ずに一生を終えるのがほとんどで、日本に移住する外国人も極端に少ないので、国籍のことを考える機会がないのでしょう。日本はほとんどの居住者の出生国、国籍、人種、言語、宗教が一致している、世界でも珍しい国なのです。

世界では国境を越えて人が出入りし、生まれた国以外で暮らしたり、複数の国を渡り歩くのは当たり前になっています。企業の駐在員の他、世界の大学を回るのがめずらしくない大学教授や研究者、国境を越えた就職、他国の社会制度や生活環境を求めての移住、複数国のいいとこどりをした住み分け・・・。特にアジアやヨーロッパは国境を越えた通勤もめずらしくありません。国境は日本でいう県境のような感覚です。

個人が生涯に二つ以上の国に深く関わるのが珍しくない現在、パスポートを二つも三つも持つのは全く珍しいことではありません。ほとんどの先進国が多重国籍を認めています。また多重国籍を正式に認めて認めていない国でも、また祖国に帰って働けるなど、何らかの形で母国の国民の権利を認めている国は約90か国にものぼります。他国の国籍を取ることさえできない国がたくさんあることを考えると、ほとんどの国が他国の国籍をとっても母国人としての権利を残しているといえます。日本のように他国の国籍を取ったら「赤の外人」と扱われる国はめずらしいのです。

だから移住先の国籍を気軽に取る移民は多いですが、他国の国籍を取ると日本国籍がなくなってしまう日本人にとっては簡単な決断ではありません。日本国籍がなくなると日本国民としての権利がすべて失われるので、日本に行くたびにビザを取り、日本の健康保険にも入れず、日本で働きたいと思っても自由に働くことができません。私のように日本語を完璧に話し、日本で働いた経験も長く、日本の社会事情に通じていても、他国の国籍を取れば、日本のことなど何も知らず日本語もまったく話せないただの外人と同じ扱いになってしまいます。

オーストラリアは労働人口の三分の一が海外生まれという移民大国です。労働者の典型的な移住パスは、最初に労働ビザなどの各種ビザを取ったあと永住権を取るか、初めから永住権を取って移住します。永住権さえ取ってしまえば国籍を取るのは簡単なので、国籍まで取ってしまう人が多いです。なぜ移住先の国籍を取るのかというと、仕事をするうえで有利な面があったり選挙権があるなど、移住先の社会の一員として生活する上で都合がいいことが多いからです。オーストラリアはもちろん多重国籍を認めているので、インド、シンガポール、タイ、ベトナム、韓国、台湾などのアジア諸国からの移民や多くのヨーロッパ系移民も、自国の市民の地位を残したままあたり前のようにオーストラリア国籍を取ります。「日本人は他国籍を取ると日本人としてのステイタスを失ってしまう」と言うと、どこの国の移民もびっくりします。まさか日本のように高度に発達した国が、こんな時代遅れなことをやっているとは思わないようです。

中村博士のように、移住先の社会で活躍するために日本国籍を捨てて他国籍を取る日本人は少なからずいますが、これは日本への愛着がなくなったということではありません。単に移住先で社会的地位を確立し、安定した生活を送りたいだけなのです。母国の国籍を積極的に捨てたい人など普通はいません。それどころか、多くの海外移住者が日本にいたときより国を思う気持ちが強くなることはよく知られています。日本人だけでなく、オーストラリアの国籍をとった多くの移住者も祖国への思いを決して忘れず、祖国への貢献活動をしている人はたくさんいます。国籍は単なる法律上のステイタスであり、個人の母国に対する思いとはまったく次元が違うのです。他国の国籍を取る日本人が祖国の国籍を捨てなければならないのは、日本の法律が複数の国籍を持つことを許さなからという単純な理由からです。

海外の人材を積極的に呼び込んだり、グローバルに協業していくことが国の競争力を左右する時代、日本に腰を据えて活躍したい外国人に母国の国籍を放棄するよう求めたり、日本に貢献してくれる可能性のある海外の人材に日本の国籍を捨てるよう求めることは、日本にとっていいことは一つもないのではないでしょうか。個人が一つの国に帰属する習慣は、とっくに過去のものになってしまいました。世界は日本を素通りしてどんどん一つになっていきます。日本の世界での孤立化がますます深まっています。


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divayoshiko

Author:divayoshiko
よりよい生活と仕事環境を求めて、日本の会社を辞めてオーストラリアに移住しました。IT技術者として生活を確立するまでの様子、日々の生活や仕事のこと、現地情報、オーストラリアや日本について感じることなどをつづっています。メルボルン在住。
Twitter @divayoshiko

これまでの歩み
2009年
4月  技術独立ビザで永住権取得
2010年
1月  東京からブリスベンに移住
2月  シドニーに移住
4月  ブリスベンに移住
5-6月 メルボルンに長期出張
2014年
2月  メルボルンに移住

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