先日日本に住む友人とおしゃべりしていたら、「何人(どこの国の人)に見られる?」ときかれました。日本人とか韓国人とか中国人などという答えを期待していたようですが、残念ながら答えは「どこの国の人にも見られない」です。なぜなら、まわり中移民だらけなので、誰も誰がどこから来たかなんて気にしていません。親しくなれば話のついでに自分から出身国をいうことになりますが、あえて相手からきかれることはあまりありません。明らかに移民同士とわかると、親しみもあって出身国をききあったりはしますけど。
第一答えをきいたところで意味がない場合が多いのです。なぜなら生まれた国と育った国が違う場合、いままでに住んだ国が複数ある場合、両親は外国生まれでも自分はオーストラリア生れなど、パターンがたくさんありすぎて答えようがない場合が多く、国の名前をいっても必ずしもその人を理解する助けにはならないことも多いのです。「どこの国の人?」と一口にいっても、いろいろな意味をもちます。

人種
両親の出身国とか、自身の生まれた国などで判断されます。でも両親や先祖が異人種間結婚なんてまったくめずらしくありませんが、その場合はどうなるのか?以前アメリカ籍を取った元日本人がノーベル化学賞を受賞したとき、アメリカでは当然アメリカ人が取ったと報道していましたが、日本では日本人が取ったと報道していました。アイススケートでは、アメリカ籍でアメリカ選手として出場しているのに、両親が日本人で日本人の顔をしていると、日本では日本人の扱いで報道したりします。日本人は血統を重んじる国なので、外国籍でも外国に永住していても、外見が日本人に見えるかどうかは重要なようです。

国籍
オーストラリアに生まれてオーストラリア国籍を持つ人もいれば、私のように海外籍を持つ移民もいるし、移民後オーストラリア国籍を取った人もいます。国籍を複数持つ人はまったくめずらしくありません。私は世の中の流れに逆らっていまだに二重国籍を認めていない日本の国の国民なので、オーストラリア国籍を取ると日本国籍を捨てなければならず、今のところオーストラリア国籍を取るつもりはありませんが、もしこの国に永住する決意をし、日本が二重国籍を認めるなら、オーストラリア国籍を取って国民としての義務と責任を果たしたいと思います。この場合、私は何人になるんでしょうか。また、日本国籍を捨ててオーストラリア国籍を取った場合は何人と呼ばれるんでしょうね?

居住国
ヨーロッパやアジアに生まれ、小さいころに移住してそこにずっと住んでいたけど最近オーストラリアに来たなんてという人はよく見かけます。こういう人は何人というんでしょう?そういえば日本にとって国内に居住していることは重要なようで、日本人でも外国に住んでいると、政府や民間サービスでの扱いがよそよそしくなったりします。

言語
日本で生まれ両親は日本人でも、小さいころに移住し、日本語よりも英語の方が得意で、日本語はなんとかしゃべれるけど読み書きは苦手なんていう人もいます。こういう人は何人なんでしょう?
こういう人たちだらけなので、何人かを気にすること自体あまり意味はないのです。日本はもともと村社会なので、誰かに会うとまず「どこの出身ですか?」「どこの会社ですか?」などとまず所属をたずねてから会話が始まることが多いですが、いろんな人種が共に生きている社会でみんなが気にするのは出身地ではなく、その人がどんな発言や行動をし、どんな能力があり、どんなパーソナリティを持つ人かということ。相手がまったく知らない人でも、バックグラウンド情報がまったくない状態でも、会話はどんどん進行します。逆に会話をしながら発言内容によって自分のことを知ってもらうといった感じ。この辺りは日本とまったく逆なのでいまだにとまどうことがあります。
以前アメリカに住んでいた時も同じで、出身国などあまりきかれませんでした。出身国とか人種とか家族などといったプライベートなことは親しくないうちは積極的にきかず、相手が話し出すまで待つという暗黙の了解があるようです。といっても、私は会ったばかりの中国人や韓国人に(オーストラリアでではありません)、「年収はいくらですか?」などという思いっきりプライベートなことをきかれて度肝を抜いたことがあります。アジア人の方がプライベートなことを訊くのに抵抗はないのかもしれません。
国の境があいまいになり、組織というものの価値が変化している今、結局最後に意味を持つのはその人が所属するグループではなく、その人個人がどんな風に生きているかということ、これがすべてになるんじゃないかと思います。
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