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世界に取り残される日本の多重国籍制度

青色発光ダイオードを発明した中村修二博士他二名の日本人がノーベル物理学賞を受賞しました。日本のメディアは日本人が三人と発表しましたが、世界のメディアは日本人が二人、アメリカ人が一人と書いています。中村氏はアメリカ国籍を持っており、日本の国籍を放棄しなければならないので、日本人が三人という記述は間違いということになります。世界で中村博士がアメリカ人と認識されてしまうのは、日本が成人の複数国籍を認めていないからです。

多くの日本人は、国籍という概念をあまり理解していません。「日本に生まれ、日本語を話し、外見が日本人に見えれば日本人だ」ぐらいの感覚でしょう。国籍とは個人がどこの国に所属し、どこの国に心理的に帰属するかというようなあいまいな印象しかないようです。日本人は生まれてからずっと日本を出ずに一生を終えるのがほとんどで、日本に移住する外国人も極端に少ないので、国籍のことを考える機会がないのでしょう。日本はほとんどの居住者の出生国、国籍、人種、言語、宗教が一致している、世界でも珍しい国なのです。

世界では国境を越えて人が出入りし、生まれた国以外で暮らしたり、複数の国を渡り歩くのは当たり前になっています。企業の駐在員の他、世界の大学を回るのがめずらしくない大学教授や研究者、国境を越えた就職、他国の社会制度や生活環境を求めての移住、複数国のいいとこどりをした住み分け・・・。特にアジアやヨーロッパは国境を越えた通勤もめずらしくありません。国境は日本でいう県境のような感覚です。

個人が生涯に二つ以上の国に深く関わるのが珍しくない現在、パスポートを二つも三つも持つのは全く珍しいことではありません。ほとんどの先進国が多重国籍を認めています。また多重国籍を正式に認めて認めていない国でも、また祖国に帰って働けるなど、何らかの形で母国の国民の権利を認めている国は約90か国にものぼります。他国の国籍を取ることさえできない国がたくさんあることを考えると、ほとんどの国が他国の国籍をとっても母国人としての権利を残しているといえます。日本のように他国の国籍を取ったら「赤の外人」と扱われる国はめずらしいのです。

だから移住先の国籍を気軽に取る移民は多いですが、他国の国籍を取ると日本国籍がなくなってしまう日本人にとっては簡単な決断ではありません。日本国籍がなくなると日本国民としての権利がすべて失われるので、日本に行くたびにビザを取り、日本の健康保険にも入れず、日本で働きたいと思っても自由に働くことができません。私のように日本語を完璧に話し、日本で働いた経験も長く、日本の社会事情に通じていても、他国の国籍を取れば、日本のことなど何も知らず日本語もまったく話せないただの外人と同じ扱いになってしまいます。

オーストラリアは労働人口の三分の一が海外生まれという移民大国です。労働者の典型的な移住パスは、最初に労働ビザなどの各種ビザを取ったあと永住権を取るか、初めから永住権を取って移住します。永住権さえ取ってしまえば国籍を取るのは簡単なので、国籍まで取ってしまう人が多いです。なぜ移住先の国籍を取るのかというと、仕事をするうえで有利な面があったり選挙権があるなど、移住先の社会の一員として生活する上で都合がいいことが多いからです。オーストラリアはもちろん多重国籍を認めているので、インド、シンガポール、タイ、ベトナム、韓国、台湾などのアジア諸国からの移民や多くのヨーロッパ系移民も、自国の市民の地位を残したままあたり前のようにオーストラリア国籍を取ります。「日本人は他国籍を取ると日本人としてのステイタスを失ってしまう」と言うと、どこの国の移民もびっくりします。まさか日本のように高度に発達した国が、こんな時代遅れなことをやっているとは思わないようです。

中村博士のように、移住先の社会で活躍するために日本国籍を捨てて他国籍を取る日本人は少なからずいますが、これは日本への愛着がなくなったということではありません。単に移住先で社会的地位を確立し、安定した生活を送りたいだけなのです。母国の国籍を積極的に捨てたい人など普通はいません。それどころか、多くの海外移住者が日本にいたときより国を思う気持ちが強くなることはよく知られています。日本人だけでなく、オーストラリアの国籍をとった多くの移住者も祖国への思いを決して忘れず、祖国への貢献活動をしている人はたくさんいます。国籍は単なる法律上のステイタスであり、個人の母国に対する思いとはまったく次元が違うのです。他国の国籍を取る日本人が祖国の国籍を捨てなければならないのは、日本の法律が複数の国籍を持つことを許さなからという単純な理由からです。

海外の人材を積極的に呼び込んだり、グローバルに協業していくことが国の競争力を左右する時代、日本に腰を据えて活躍したい外国人に母国の国籍を放棄するよう求めたり、日本に貢献してくれる可能性のある海外の人材に日本の国籍を捨てるよう求めることは、日本にとっていいことは一つもないのではないでしょうか。個人が一つの国に帰属する習慣は、とっくに過去のものになってしまいました。世界は日本を素通りしてどんどん一つになっていきます。日本の世界での孤立化がますます深まっています。


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日本人経営者の恥ずかしい実態

日本の某有名グローバル企業のオーストラリアの営業拠点で働いている友人は、会社の経理財務を引き受けています。会社の財務状況を管理し、経営者に報告するのは彼女の役目。オーストラリア国内の営業活動にかかわる財務状況を日々追いかけ、オーストラリア法人の責任者に報告します。

と・こ・ろ・が!日本から駐在で来ているこの責任者が会計を知らないため、仕事に支障をきたしているというのです。正式な財務三表には損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書(資金収支表)があります。彼女がキャッシュフロー計算書を作って持って行ったところ、この責任者がキャッシュフローをまったく理解していないので唖然としたそうです。彼はキャッシュフローを見て、「何これ?売上はどこにあるの?」と尋ねたそうです。これはもう笑うしかない。

キャッシュフロー計算書は現金の収支を管理するものなので、売上はありません。売上を見るのは損益計算書です。いくら売上がたくさんあっても資金繰りが悪ければ倒産に追い込まれることもあり、経営者が会社の支払い能力を示すキャッシュフローを理解して適切な経営判断をするのは常識。最終判断をするのは経理担当者ではありません。細かいことは経理担当者に任せるとしても、会社の経営者が財務三表の基礎を知らないことはありえないのです。だから普通は「財務三表の基礎中の基礎を知らない」とは恥ずかしくて口が裂けても言えないことで、堂々と「知らない」と言えてしまうこと自体が驚くべきことなのです。

彼女は財務状況を管理職に報告して判断を仰がなくてはいけないのに、その肝心の管理職が報告書を読めないため、仕事ができません。仕方がなく、他の海外拠点の責任者(非日本人)に報告して判断を仰いでいるそうです。英語もできない使えない上司なので、彼女の仕事は増えるばかりで毎日夜遅くまで残業です。

でもさすがにまずいと思ったのか、彼が次に言ったことは「○○さん(財務責任者の名前)、これから毎日30分、僕に経理の基礎を教えてよ」。キャー、そう来たか!日本でしか許されない部下の使い方!

第一、なぜ彼は自分で勉強しないのでしょうか?経理の専門家になるのではないので、ちょっと本を読めばわかる話。薄い本を一冊買って読めばキャッシュフローを基礎などわかるのです。彼の返答は「いやー、僕本読んで勉強するのってきらいでサー。」だそうです。

次に、彼に必要な能力がないのは自分の責任なのに、なぜ部下に負担を押し付けるのでしょうか。彼女は財務の専門家で、社員教育の専門家ではありません。この国では、特定分野の専門職に専門以外の仕事を頼むことはありえません。彼女は高度な財務能力を提供することによって給料を得ており、財務の仕事をすることでキャリアを構築しているのです。

そもそもオーストラリアでは(他の国もそうですが)、こんな経営の基礎さえわからない人は業務を遂行できないので、大会社の営業拠点の上級管理職にはなれません。彼はたまたまオーストラリアに赴任してきた、典型的日本のサラリーマン。この会社は、本を読むのもイヤな人になぜ責任の重い役職を任命してしまうのでしょうか?日本人なら誰もが知っている有名企業の実態は驚くべきものでした。

この話を聞いて思い出したのは日本で働いていた時のこと。仕事上いろいろな会社の上級管理職や経営者に会うことが多かったのですが、彼らは驚くほど経営や財務を知らないのです。IT技術者はITの知識がなければなれません。会計士は会計の資格がなければなれません。ところが日本の経営者は経営の素人でもなれるのです。若いときに経営とは関係ない仕事をしていても、終身雇用制のもと、成績がよかったり社内政治をうまく立ち回ることにより、年功序列で最後にもらえるご褒美が上級管理職や経営者。経営能力に優れているから経営者になるのではありません。日本以外の多くの国では、経営者になるためにはそのための専門的な勉強をします。経営者の経歴を見ると、ビジネススクールの学位を持っていることが多いのはそのためです。

経営を知らず、経営者としての役割を果たせない人に経営をやらせ、やっつけ仕事で仕事をし、足りない部分は残業をいとわない部下や周囲に負担を強いることによってかろうじて回しているのが日本の会社の経営。日本の産業界が国際競争からどんどんおいて行かれているのはちゃんと理由があるのです。

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調査捕鯨違法の判決で日本人が知っておくべきこと

国際司法裁判所は、「日本の南極海での調査捕鯨は、科学的な調査とは言えない」との判決を下しました。これはオーストラリアに住む日本人の一人である私にとって歓迎すべきニュースです。オーストラリアに移住してからというもの、毎年1月ごろになると日本の捕鯨船が遠路はるばる南極海までやってきて、オーストラリアの目と鼻の先で捕鯨を繰り広げ、非難を浴びていました。この時期にテレビをつけるといつもビクビクし、’Japan’、 ‘Whaling’ という言葉を聞くたびにドキッとしていたものです。私がオーストラリアに移住してきたのも1月の初めで、毎日のように日本の捕鯨への非難が繰り広げられていました。

日本は商業捕鯨が禁止されてから、調査捕鯨の名のもとに捕鯨をしています。不思議なのは、今回の国際司法裁判所の判決は「日本のやっていることは科学的調査ではない」と言っているだけにもかかわらず、日本の反応は「日本の食文化が失われる」などとトンチンカンなものが多いこと。「日本の真摯な科学的調査の功績が認められなくて残念」という声は聞こえてきません。これはまさに、日本の調査捕鯨が建前にすぎないことを示唆しています。

本当に調査捕鯨なら、調査結果を世界に公表し、国際社会と協力しながら生態系の研究に積極的に貢献し、なぜ鯨を殺さなければ調査ができないのか、なぜその捕獲数が必要なのか、なぜ生態系を壊すことはないのかを明らかにすればいいだけの話で、それならば合法的な調査だと認められる可能性はあります。それができないのは、もともと科学調査などする気はないか、説明能力がないかのどちらかでしょう。調査捕鯨自体は違法ではないのですから。

日本社会では本音と建前の使い分けが一般的なので、このような二枚舌を使うことを何とも思わなくなっているのかもしれません。でもそれが通用するのは日本国内だけ。西洋社会はこのような非論理的なことは理解できないばかりか、このようなごまかしを非常に嫌います。調査捕鯨の正統性を主張するのなら、それを論破できる証拠を挙げて説明しないと認めてはもらえません。そしてもし本当は調査ではなく商業捕鯨目的なら、それは30年以上も前に決められた国際条約に違反しているので、当然許されることではありません。もし商業捕鯨が日本や国際社会にとって有用だと思うのなら、それを主張するのはかまいませんが、本当は食用なのに表向きは調査ということにするというような姑息な手段は国際社会では通用しません。しかもそんなごまかしはとっくにバレていて、だからこそ非難を浴びているのです。日本がこれからもこのような二枚舌を使い続けるならば、日本の国際社会での信用を失って行くでしょう。

これまで日豪間では、捕鯨についての論理的な議論がなされず、感情論に終始して無用な年月ばかりが流れる中で、27年間もの間調査捕鯨という名の捕鯨が行われてきました。オーストラリアの目の前で、オーストラリアが最も嫌う残忍なやり方で動物を殺すことは、オーストラリア人の感情を逆なでします。そしてこのことは日豪間の関係にも影を落としてきました。今回国際司法に照らして客観的な判断がされたことはとてもうれしいです。これを機に日豪関係の溝がなくなることを祈るとともに、もっと早くにこの結論が出ていればよかったと思います。

テーマ : オーストラリア
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離れてわかった移住先の環境の良さ

今回年末から正月にかけて東京に帰省するにあたり、心配だったのは真夏から真冬への移動です。ブリスベンは最高気温が連日30度の完璧な夏。東京は氷点下になることは少ないものの、最高気温は10度以下。お正月に帰省するのは今回が初めてで、日本のお正月も四年ぶり、そして数週間というまとまった期間を東京で過ごすのも久しぶりです。夏冬間の移動は以前にもやったことがあって体への負担の大きさは分かっていたので、防寒対策は完璧、帰国前からビタミン剤を飲み、万全を機していました。それが効を奏したのか、最初の一週間はぴんぴんしていて、久しぶりの日本でお正月の準備やショッピングなどを楽しんでいました。

ところが一週間が経ち、まず来たのは喉の痛み。そして時折起る頭痛と倦怠感。寝たり起きたりの不安定な生活が一週間ほど続きました。おかしいのは症状が普通の風邪と違うこと。喉はイガイガしても咳や声枯れはなく、物を飲み込んでも痛いことはなく、食欲も旺盛。ただ喉がイガイガした不快な状態がずっと続くのです。

これはおそらく、東京の空気への体の拒否反応ではないかと思います。東京は世界でも一番大気汚染が進んだ場所の一つ。それに加えて今は放射能やPM2.5による汚染、そして公共の場での間接喫煙もあります。喉の痛みは低線量被曝の代表的な症状でもあるので、この影響も否定できません。西日本や海外へ避難した多くの人たちや、東京に出張に行った方々から、東京に行くと体調がおかしくなるという話はよく聞いていましたが、自分自身でそれを体験することになりました。

考えてみると、オーストラリアでは東京とは全く違う環境で生活しています。朝は鳥のさえずりで目覚め、家の外に出れば野生の七面鳥がヒョコヒョコと道端をお散歩。見上げると木々にはカワセミ、ロリキート(赤青黄緑のインコ)やマグパイ(白黒まだらの鳥)などの鳥たち。夕方は空気がきれいなせいか、息をのむような美しい夕焼け。夜には夜行性のポッサム(袋ネズミ)が鳴きながら木を揺らして遊んでいます。そして一年中枯れることのない木々とトロピカルフラワー。これでもブリスベン市の中心部から車で10分の場所です。

公共の場所は禁煙なので、タバコの煙を吸うことは一切ありません。バーに行っても完全にスモークフリーです。私は煙がイヤなので日本で居酒屋に行くのは好きではありませんが、煙がなければ飲みに行くのは好きです。(ついでに日本では街に人が多すぎるからショッピングがキライとか、他人との距離が近すぎるからヨガ教室が楽しめないなどもあります) 今回国内旅行をした際に東海道を走りましたが、煙がモクモク出ている煙突が人の住む地域の近くにニョキニョキ立っていたのにはびっくりしました。オーストラリアでは絶対に見られない光景です。(ちょっと車を走らせれば羊ばかりなので) 東京に住んでいた頃は当たり前すぎる光景でしたが、今では同じ景色も違って見えます。

四年住んですっかり慣れてしまったブリスベンの住環境。東京や他の大都市に比べれば不便なところもありますが、健康のためには素晴らしい環境に住んでいることを改めて実感しました。

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こんなに違う日本の歯医者

久しぶりに日本に帰省しています。今回の目的の一つは歯の治療。以前もブログに書いたとおり、オーストラリアでクラウンを作るのが高くて日本に帰国して作りました。オーストラリアの歯の治療費は目が飛び出るほど高いのに国民健康保険のメディケアは歯科をカバーしておらず、そのときは民間の健康保険にもまだ入っていなかったので、日本に行って無保険で作ったのです。今回は民間保険に入っているものの、オーストラリアでのクラウンの見積もりは日本の約二倍。民間保険を使ったとしても日本の無保険のほうが安いし、私の日本の歯医者さんは以前その部分を治療してもらって事情をよくわかっているという安心感もあり、日本で治療を受けることにしました。

久しぶりに会った日本の歯医者さん。挨拶もそこそこにさっそく作業に取り掛かります。ほとんど言葉を交わすこともなく、機械的にどんどん作業を進めていきます。これからどういう順序で作業を進めるのか、今なんのためにそれをやっているのかの説明はなし。もちろん聞けば教えてくれるのですが、忙しいのか申し訳程度に教えてくれるだけで、あまり突っ込んで聞けるような雰囲気ではありません。自分の体がいじられているのに、何のために今何をされているのかわからないという、不安な時間を過ごしました。この先生は比較的患者への人当たりがいい先生で、日本にいるときから長くお世話になっていたのですが、あれ?こんな先生だったっけな?と思いました。

私がこれまでに会った何人かのオーストラリアの歯医者さんは、治療内容を細かく説明することなく治療を始めることはまずありません。たとえ型取りをして歯を作って装着するという大まかな流れは事前にわかっていたとしても、今日は○をやって次に△をやって・・・細かい手順をきちんと説明してくれます。治療内容に納得して治療するかどうか決めるのは患者なので、患者が治療についてきちんと理解していることが前提ですから、そのための手間は惜しまないのです。先生と相談する時間も十分に取っているので、疑問があればどんなに小さいことでも徹底的に質問をし、完全に納得したうえで治療を始めます。治療中も治療後も質問が出てくればその都度質問すれば丁寧に答えてくれます。主体はあくまでも患者であり、健康管理を手助けしてくれる専門家を雇うのは患者。そして患者と医師はあくまでも対等な関係です。またオーストラリアでは、ある程度の時間と空間を共有した者同士は世間話やたわいない個人的な話を交わすのが一般的なこともあり、とてもリラックスした状態で先生と接します。日本の医者と接しているとどうしても医者のほうが立場が上という雰囲気を感じるので、これは大きな違い。医者と患者の関係は日本とオーストラリアでこんなにも違うのかと改めて思いました。

患者が納得するまで説明するという習慣は、特に歯科はメディケアがカバーしていない高度医療だということもあるかもしれません。民間保険に入らずに費用は自分持ちの人もいれば、保険に入っていても選ぶ保険会社のプランで、保険金額も補償金額も人によって違う。治療の選択肢も廉価バージョンから高度医療まで数多くあります。だから患者は医者の説明を聞き、複数の見積もりを取り、保険会社に問い合わせ、補償額を教えてもらって出費額を算出してからどんな治療するかどうか決めるのです。日本の場合はほとんどの医療を国民健康保険がカバーしているのでそんな面倒くさいことをする必要がないし、保険がカバーする治療内容はだいたい決まっているので、自分の治療のオプションについていろいろと考えなくても誰でも似たような治療内容になります。そんな背景が医者と患者の関係にも反映しているのでしょう。

日豪ではまったく違う医療システムなのでどちらがいいとは言えませんが、患者が主体かどうかというのは大きな違いだと感じます。日本の場合は国民みんなが同じような医療を国民健康保険を使って低コストで受けることができ、先生に任せておけばあまり考えなくてもたいていのことは機械的に進んでいく。豪州では基本的な治療の範囲内なら国民健康保険を使い低コストまたは無料で受けることができ、範囲外の高度医療になると、どれだけお金をかけて治療を受けるかは個人の裁量に任せられる。個人主義がよく表れています。オーストラリアに来てからは医者任せではいられないので、自分の健康状態について主体的に管理するようになりました。

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日本の郷土料理は世界の驚き

今オーストラリアのテレビ局SBSで、Destination Flavor Japan という番組が放送されています。これはアジア系オーストラリア人男性の料理セレブ、Adam Liawが日本各地を旅しながら日本料理を満喫し、作り方を教えるというもの。Adamは世界中で放送されている人気料理番組Master Chef (当ブログ「 Masterchefは私の料理の先生 」でも紹介)のオーストラリア版の番組で勝ちぬき、トップシェフに輝いた弁護士です。日本に住んだことがあって奥さんは日本人、日本語も堪能です。

Adam Liaw

オーストラリアは移民の国のお国柄、世界の国出身の料理セレブがたくさんいて、いつもテレビで自国料理の作り方を紹介しています。出身国のいろいろな地方を訪問して地元の人に郷土料理の作り方を教わったり、料理セレブが視聴者に作り方を教えてくれる番組が大はやり。でも日本は世界に誇るすばらしい料理があるにも関わらず、移民が少ないためか日本料理が紹介されることはあまりなく、これまでとても残念に思っていました。Adamは日本人ではないものの、英語と日本語が話せて、日本に行って地元の人にインタビューして番組作成ができるという、オーストラリアでは大変貴重な存在。彼がMaster Chefになってくれて、本物の日本料理をオーストラリアの人達に紹介してくれるなんて、日本人の私には大変うれしいことです。なにしろ、オーストラリアのレシピサイトで日本料理を検索しても、本物の日本料理とはまったく違うものが紹介されていたり、日本料理店に行っても中国人や韓国人経営でヘンテコな和食を見ることが多く、本物のすばらしい和食が紹介されることはあまりないのです。

番組ではAdamが北海道から沖縄まで各地を訪ね、郷土料理を紹介します。漁師と一緒に海に繰り出して漁の体験をしたり、氷に穴を空けてわかさぎ釣りをしたり、酒蔵の見学をしたり、わんこそばに挑戦したり、日本旅館に泊って温泉に入るなど、日本のユニークな文化が毎回紹介されています。この番組はただの食べ歩きではなく、料理の作り方を教えてくれる番組なので、これまでも和食の定番の肉じゃが、きんぴら、焼きおにぎり、手巻寿司、うにスパゲッティなどを、Adamが実演で紹介しました。海外向け和食料理とは一味違い、本格的な和食の作り方も教えてくれます。鰹節を削って取る出汁の作り方、昆布だしの取り方、南蛮漬けなど、忙しい現代日本人があまりやらなくなってしまった伝統的な和食も教えてくれます。また同じ料理でも土地によって作り方がちがうので、私の知っているやり方と違う料理法が紹介されていたりして、日本人の私にも十分見ごたえがある番組です。日本でも食べ歩きの番組はよくありますが、このような番組は見たことがありません。

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日本の外からの視点で改めて日本料理を見てみると、やはり日本料理は世界の他の料理と比べてもすばらしいの一言。海山の豊富な食材に恵まれ、調理方法は本当にバラエティ豊か。よくテレビでやっているアジア料理の番組ばかり見慣れてしまうと、日本の食文化の豊かさには自国料理ながらびっくりしてしまいます。こんなにちっぽけな国なのに、地方ごとに違う特色を持った郷土料理がある日本。日本にいると当たり前に思えてしまう料理も、世界から見れば驚くべきものなのです。オーストラリアは移民が持ち込んだ各国料理が豊かですが、日本の22倍の領土を持っていても、土地によって郷土料理が違うなんてほとんどないですからね。

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世界から見たら驚くべき日本料理のよさをもっと世界に紹介したら、日本のいい宣伝になります。日本の誇るべき資産を観光や輸出、はたまた日本人が世界市場を相手にビジネスを広げるすることにもつながるのではないでしょうか。このような番組を海外にばかり作ってもらってないで、日本主導で作って世界に輸出したり、海外の制作者のスポンサーをすることだってできるのです。世界は本当の和食のよさをまだまだ知りません。本当の良さを知っている私たち日本人が広めるしかないではありませんか?

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日本の生け花は世界級

草月流生け花の展示会が地元であったので行ってきました。オーストラリア各地やニュージーランドの草月流師範たちの作品の展示会と、世界各地に草月流生け花を広めている川名哲紀氏の実演会です。華道には興味はあったものの、オーストラリアでの展示会には特に期待はしていなかったのですが、どっこいそれはすばらしいものでした。見に来ていた人たちはオーストラリア人の年配女性が圧倒的。展示されている作品についている名前も日本人は少なく、西洋系の女性の名前が圧倒的です。

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これまでもオーストラリアで日本の生け花の展示は何度か見たことがありましたが、オーストラリアで生け花をするのは難しいのではないかと思っていました。特に私の住むクイーンズランド州の花といえば、真赤や真黄、どぎついピンクなど、トロピカルなものが多く、日本の伝統芸術のイメージとは大きく違います。ここでは材料の入手が困難だろうと思っていたのです。でも展示してある草月流の自由度にはびっくり。花は現地のトロピカルフラワーがふんだんに使われ、オーストラリアの花と日本にもある花を一緒に生けている作品もあります。花だけでなく、木の枝、古い木の株、枯れ葉など、自然界にあるものなら何でもありです。それだけではありません。紐、竹、紙など、想像力に任せていろいろな材料が使われているのです。必ずしも床の間に飾るような型にはまったものではなく、道端に生えているような野生の花を利用して気軽に生けているのも特徴です。これだったら、野生の花や木には不自由しない地元でちょっと取ってきて生けることができます。

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実演もすばらしいものでした。現地の木の枝や花、そして会場の植物園に生えている草木が用意されています。まず全体を見てささっと剪定してから、どんどん花瓶に挿していきます。それも観客側から出来あがりが見えるように、花瓶の後ろ側から!絶対に前側には立たず、前から見た姿を想像しながら挿しているんですね。たちまちのうちにいくつもの作品が次から次へと出来あがっていき、観客から歓声が上がりました。

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花だけでなく、木の枝も多用していました。自然が作った枝はやたらに切リ取ってしまうのではなく、なるべくあるがままの枝の流れを利用するのだと説明。観客はひたすら関心した様子。また日本の生け花と西洋の生け花の違いについても説明していました。梅の枝を生けたとき、下に落ちた花弁はそのままにしておくのだと説明します。花弁が落ちるのは自然のなせる技。落ちた花弁や枯れ葉をきれいと思うか汚いと思うかは考え方しだい。「日本の伝統芸術は、自然がなすことは価値あるものとして尊重するのです」と説明すると、観客からは深いため息が漏れていました。私たち日本人からすると当たり前のことでも、西洋のフラワーアレンジメントや西洋庭園に慣れたこちらの人から見ると新鮮なことなんですね。日本の素晴らしい芸術を誇らしく思いました。

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余談ですが、一つ感心したこと。実演者が英語で解説しながら生けているとき、時々英語の名前を知らなかったり、実演に集中したくて英語で話したくないときは、日本語で「これ英語でなんていうの?」「これ英語で言って」と関係者に助けを求めていました。これ、簡単なようで日本人はなかなかできないのです。英語ネイティブの観客に向かって英語でしゃべろうとすると、どうしてもちゃんと英語で話さなくちゃ、と思ってしまいがち。バイリンガルがその場にいたとしても、「これ英語で言って」と言って日本語で話す人はなかなかいない。恥ずかしいと思ってしまうんですね。でも彼にとってそんなことは恥ずかしいことではない。なぜなら、彼にとって観客に見せるものはあくまでも華道であり、自分が絶対的に自信をもっているのも華道。だから英語と日本語のちゃんぽんで話したって別に恥ずかしくもなんともない。足りないところは他人に助けを求めればいいのです。観客にしたって、彼の生け花を見に来てるんだからそんなことは大したことではありません。英語が重要なのではなく、あくまでも伝える内容が大切なのだと教えられた気がしました。

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花瓶や剣山などの華道製品の即売会も行われ、実演の後だけにみんな競うように買っていました。日本の華道、海外でもなかなかすごいものです。特に草月流は型にとらわれないので、海外でファンが多いそうです。

すばらしい展示会と実演会でしたが、残念だったのはほとんど宣伝がされていなかったこと。私も友人がたまたま教えてくれなかったら知らないままでした。多くの人が触れるメディアに載せられていたら、もっと多くの客層と人数が来ていただろうにと残念に思いました。すばらしい物をもっているのに、伝えるのがヘタなばかりに価値がなかなか世界に知られないという、日本の典型を見た思いでした。

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ツッコミどころ満載の在外選挙

移住以来始めて在外選挙に行ってきました。海外居住者が投票する場合、まず在外公館に行って選挙人登録の申請書を提出をします。本籍地のある場所の選挙区で投票することになるので、申請書は外務省から本籍地の市町村に行き、戸籍を確認してから選挙人証が発行されます。それが外務省経由で在外公館へ送られ、ようやく選挙人の手元に届きます。政府のデータ処理が電子化されていないことと、戸籍システムがあるがゆえの複雑な経路のため、この期間なんと2カ月!オンラインで何でも瞬間的に処理できる時代に、これは大正時代か?そしていざ在外選挙人証が届くと、受領証を郵送で返送しろと書いてあってまたびっくり。しかも返信用封筒がついているわけでもありません。電子メールで簡単に済むことまですべて書類化し、これに関わるすべての人の手間をわざわざ増やすなんて、オーストラリアではありえません。この一連の流れに関わる日本人の高い人件費は、すべて日本国民が払う税金から出ています。といっても私は日本の税金は払ってないですけど。

さて、選挙日が近づいたので選挙期間の確認です。在外選挙では日本の選挙日までに投票用紙を日本に届けるため、日本の投票日よりも前に投票します。領事館のウェブサイトに行くと、選挙開始日が書いてあるけど、終了日は「在外公館によって終了日が違うので事前にお問い合わせください」とのこと。だから領事館のウェブサイトで問い合わせているんだが、ウェブページの更新もしないんだろうか?(と思っていたら、結局更新しないまま最終日を迎えてしまいました。)なに、じゃあ選挙人一人ひとりがわざわざ領事館に電話して問い合わせろってか?何のためにあるんだかわからない領事館のウェブページ。と思っていたら、いきなり領事館からメールが来て、ここでようやく終了日を知ることになる。10日間の選挙期間が始まった後、終了日の6日前のことです。

さて、いよいよ投票日。領事館への入館はいつもの鞄の中身チェックに加え、スキャナを使ったボディチェックも。部屋に入ると、こちらは一人しかいないのに狭い部屋の向こう側に四人の係員がこちらを向いてずらっと並んで座り、なんだか重々しい雰囲気。ここでまず、投票用紙の請求書を書かされます。そんなもん最初から用意しとけと思うんですが、なんでも事を複雑にするのが好きなようです。次に、領事館から他人の投票用紙と一緒に日本に送られた自分の投票用紙を、自分の戸籍のある各市町村の選挙管理委員会に送るための封筒に住所を書かされます。まったく、戸籍があるおかげですべてのプロセスが複雑になります。そしてようやく投票用紙をもらいます。でももらうのは選挙区用と比例代表用の二枚の投票用紙だけではありません。追加で四枚の封筒。それは二枚の投票用紙を別々にまず内封筒、そして外封筒に入れるための四枚なのです。薄い紙の封筒は一度に破ってしまえば一重でも三重でも変わらないんだが、あくまでも見かけが厳重であることが重要なようです。

全国の選挙区の候補者が載った分厚いファイルから自分の選挙区を選び、候補者の名前を確認して投票用紙に記入。置いてあった鉛筆は使わず、自分のボールペンを使いました。そして封筒を係員に渡すと、
「ボールペンで書いたものは受け付けられません」
「えっ、なぜですか?」
「そのように指導されています。私たちは選挙の仕事を請け負っているだけなのでわかりません。質問がある場合は総務省に聞いてください」
(はあ?聞いてくださいって、いま領事館にいるんだけど、私に日本に電話しろっていうの?)
「鉛筆だと改ざんされる可能性もありますよね?」
「だからそのようなことがないように二重封筒にしてるんです。投票用紙をお渡ししたときに鉛筆でとお願いしたはずです。」
(いくら封筒を二重にしてたって、封筒から出して改ざんされたら同じなんだが)
「でも投票用紙にはそういう注意事項は書いてありませんでした」
「では日本に電話して、ボールペンでの記入が有効かどうか聞いてみますがいいですか?」
(ということは今まで同じ質問をした人はいなかったのか。置いてある職員向け在外投票マニュアルを見ようともしないから、きっと載ってないんだろうな。)

で待たされること10分ほど。やっと出てきた職員が説明することには、
「鉛筆だと間違えたとき消しゴムで消せますが、ボールペンで間違えて上から線で消して書き直すと読み取りにくいことがあるからとのことです」
「書き間違えたら新しい用紙を使えばいいじゃないですか」
「でもそれだと投票用紙をたくさん用意しなくてはならないので」
(そんなもんあなたたちの人件費に比べたらなんぼでもないんだが)
で結論は、書き間違えてないならボールペンでも有効とのことでした。ホッ。

書き換えが簡単な鉛筆で書くということは、後から書き直していいですよと言っているのと同じです。投票用紙は公文書と同等で厳重に管理されるべきものなのに、鉛筆で書くなんて常識的ではありません。そして気持ちが悪いのは、注意書きには「鉛筆で」とは一言も書いてないのに、係員は鉛筆を使わせるよう「指導」されていること。公正さが必要な選挙では、ルールを明確にすることが一番大切ですが、明確になっていないルールを守るよう要求される。そして要求した者に理由を聞いても答えることができない。あいまいさを良しとする日本らしいやり方ですが、選挙にまであいまいさが適用されるのは納得できません。外側を二重封筒にしていかにも厳重な管理をしているかのように見せていますが、肝心の中身は小学生が使う鉛筆。この厳しく見える見かけと実際の中身の緩さの同居具合がなんとも笑えてしまうのです。「箱モノ=見た目わかりやすい外側を取り繕うことでお茶を濁すこと」が好きな日本らしいやり方だなと思いました。

そもそもこんな問題が起こるのは投票用紙を手書きで書き、人手で集計するなどという前時代的なことをやってるから。今回からネット選挙解禁と騒がれていますが、他の国が当たり前のようにやっているインターネットでの選挙活動ができるようになっただけの話。日本の道のりは長いです。


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解雇はしやすい方がいい

会社から突然解雇を宣告される。経験のある方ならよくご存じと思いますが、もうそれは言い表せないほどの苦痛です。昨日まで働いていた職場や同僚との突然の別れ。自分が掲げていた仕事の目標や将来のプランの連続性を突然断たれ、頭の中は真っ白。自分の存在を否定された気分で、できることといったら呆然と立ちすくむことだけです。

私は日本の外資系企業で働いていたときに、即日解雇を告知されたことが二回あり、上司や同僚の解雇も何度も見てきました。ある日朝普通に出社したら部門の閉鎖が決まっていて、他の同僚全員と共に突然の解雇宣告。部屋の隅には引越用の段ボールが積まれていて、すぐにこれに私物を入れて家に送るよう言われました。またある時は朝会社に行ったら、その日は家から客先に直行していた同僚の解雇を知らされ、何も知らずに帰って来たその同僚は、10分以内に荷物をまとめて出ていけと言われて唖然。いろいろと会社に不利な工作をする時間を与えないためです。さすがに10分以内は無理で、もうちょっと時間がかかりましたが、彼が出て行くと直ぐにオフィスに入るときに使うドアの暗証番号が変更されました。このような解雇はオーストラリアでもよくありますし、他の多くの国でも普通に行われていると思います。

日本では終身雇用の習慣が根強く解雇規制があるため、このようなバッサリスッキリの解雇より、社員を虐め回して自発的に辞めるように仕向ける陰湿なやり方で細々と解雇することが多いと思います。解雇がしやすい国としやすい国、どちらがいいかというのは難しい問題ですが、両方の国で働いた経験からいうと、個人、企業、国の利益を総合的に考えて、解雇がしやすい国、つまり人材が流動的な国の方が幸せな結果をもたらすのではないかと思っています。

終身雇用の欠点は、仕事をしてない人や、その時時点で必要ない人にも給料を払い続けなければならないこと。だからできる人に負担が集中してしまい、会社はもっと人を雇いたくても仕事をしていない人の給料を払っているおかげで本当に必要な人を雇うことができません。忙しい人はますます忙しくなり、休暇を取るのも難しく、馬車馬のように昼夜働きづめることになります。

オーストラリアでは、従業員が必要でなくなったらさっさと切るのはよくあること。業績があがらないというのはひとつの理由でしょう。でもある会社で力を発揮できなくても他の会社でぐんぐん実力を発揮することもあり得ます。人の生産性は環境で変わるものだから、一つの会社でダメだったらからといって人生終わりではないのです。またビジネス環境は常に動いており、三年前に必要だった人材が今日も必要だとは限りません。この場合、自分の実力が発揮できない職場で悶々としているよりも、自分を必要としてくれる環境にさっさと移って力を発揮した方が、会社のためにも本人のためにも遥かにいいのです。これができるのは労働市場が流動的なおかげです。

オーストラリアでは、従業員の退職や出産休暇で長期間の穴が空くときは、すぐに代わりの人を募集して配置します。就職市場には常にいろいろなタイプの仕事を求めている人がいるため、目的にかなった能力や条件の人材を確保することができます。例えば女性が一年の出産休暇に入る場合、期間限定で契約社員を雇いますが、このおかげで出産する女性は安心して休暇を取り、その後職場復帰することができるのです。就職市場にはいろいろな理由で短期契約で働きたい人はたくさんおり、雇用主と被雇用者両方のニーズを満たすことができます。この流動性的な雇用環境があるため、労働者は自分のライフスタイルやライフステージに合わせて正社員、契約社員、短期間、パート、自宅勤務など、働き方を自由に選ぶことができるのです。

私の同僚の女性は出産休暇から復帰し、週に四日だけ働いています。子育て中のプロフェッショナルの男性で、週に三日だけ働いている人に会ったこともあります。しばらく働いて、仕事を辞めて学校に戻って勉強してからまた働きだすというのもよくあります。会社を辞めて一年間世界一周旅行に行ってきて、また働き始めた同僚もいました。いやな上司や会社にへつらう必要もありません。いやだったらさっさと辞めて次を探せばいいだけです。このような柔軟な働き方ができるために、従業員は仕事によって人生やプライベートライフを犠牲にすることもなく、会社も必要な人を必要な時だけ雇うことができるのです。

ただしこれをやるには条件があります。まず仕事の役割の明確化。急な人材の穴あきで代わりの人を調達しても生産性が下がることがないのは、その仕事に必要な役割と能力が明確になっているからです。募集時には必要な詳細な能力条件(Job Description)を求め、その条件にぴったり合う人しか雇いません。それと能力の評価方法です。日本のように人材評価を年齢や性別、勤務時間や勤務年数で評価していたのでは、職場をどんどん移っていくシステムは成り立ちません。そしていつでも能力開発ができる環境。解雇されても大学や職業訓練校でスキルを身につけることができれば、また別の仕事をすることだってできるのです。

日本で雇用の流動化が叫ばれながらいまだに実現しないのは、既得権を持った人が能力がなくても自動的に給料がもらえる環境を手放したくなかったり、仕事を失うのを極端に恐れる人が多いのもあるのでしょう。確かに仕事を失うのは怖いことですが、それが次のステップへのチャンスになるかもしれません。私も今の仕事は元はといえば解雇をきっかけに転職したことから始まっています。転職しながらキャリアアップするのは日本の外では普通のこと。自由な労働市場があるおかげで自分に合った職場で能力を磨き、自分の人生を思い通りに生きることをことができるのです。


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日本人の英語力が日本をもっと魅力的にする

友人のオーストラリア人が日本の観光旅行から帰って来ました。彼女はもともと日本が大好きで、今までも何度か行ったことはあります。今回は東北(福島は除く)・北海道エリアの旅行です。有名な景勝地、すばらしい大自然、美しい歴史建造物、行く先々で出会った満開の桜、洗練された商品を手軽な価格で入手できるショッピング。日本のすばらしさに改めて感激して帰って来ました。私も日本人として自分の国を大いに誇りに思いました。それと共に、彼女の示唆に富んだ体験は大変興味深いものでした。

彼女は個人旅行だったので、行く先々の都市で観光案内所に寄って地図をもらったりツアーの申し込みをしたり、地域の情報を得る必要がありました。英語のパンフレットや地図が用意されているのは良かったのですが、内容があてにならず大変だったそうです。英語の間違いは当然あるにしても、困ったのは情報そのものが間違っていること。パンフレットの情報に基づいて行ったら、あるはずの観光地がなかったとか。英語の翻訳を頼んだらせめて校正を入れ、内容が現地と合っているか確認したらいいのに、と残念そうでした。英語のパンフレットは需要が少ないので更新がなおざりになっているのかもしれません。そしてさらに困るのは、観光案内所に英語を話せる人がほとんどいないので、訊ねることもできないこと。日本語の地図を示して訊いているのに、外人に話しかけられただけで固まってしまうバスの運転手もいたそうです。東北地方は昔から保守的な地域なので、そういうことはあり得る気もするのですが、外国人環境客が多く訪れる北海道の大都市でも同様だったそうで、これにはびっくりしました。

帰りは札幌から成田経由でオーストラリアに飛んだのですが、ローコスト・キャリアなので、出発の二日前になったら航空会社のウェブサイトでチェックインして、搭乗券を印刷する必要がありました。ところが札幌の大規模ホテルではプリンタが使えず、数少ないインターネットカフェを探して行ってみてもプリンタは置いていませんでした。(海外の街にはどこでもインターネットカフェがあり、プリンタも使える所も多い)これじゃあオーストラリアに帰れない!と焦ったのですが、運よくホテルに英語がえっちらおっちら話せるフロントの女性がいて、事務所のプリンタを貸してくれました。ウェブサイトに行ったはいいものの、日本では日本語のページが表示されてしまうので彼女は読めません。英語サイトへの切り替えかたがわからず、係員もわからず、何時間もすったもんだの上ようやくプリントできて大変だったそうです。旅自体は大いに楽しんだのですが、言葉のせいで苦労が絶えなかったようです。

北海道・東北地方とはいえ、彼女が問題にしていた観光案内所やホテルはすべて誰もが知っている拠点都市です。東京や大阪などの大都市なら状況は違うかもしれません。でも私は日本の本当の魅力はむしろ大都市以外にあると思っています。世界を見渡しても日本のようなすばらしい自然や田舎の街並み、歴史的建造物を経験できるところはありません。自分の近くにあるものの魅力にはなかなか気付かないのが世の常ですが、日本の地方には世界中を惹きつける魅力がいっぱいなのです。

彼女の今回の旅行では、店にはシャッターが下りて活気がない地方都市が目についたそうです。今不況や人口減で地方に元気がないと言われています。日本への外国人観光客も東北大震災以降減ってしまいました。それでも中国などのアジア圏やオーストラリアから見ると、日本は依然として観光地として魅力的な国です。今は円安の追い風もあり、日本政府は外国人観光客を取り込もうとしています。日本は元々すばらしい資産を持っているのですから、それを上手に活かせば大きなビジネスになるのです。そのためには観光を自分たちの視点だけで考えるのではなく、相手を知り、世界を知り、外国人観光客にとって何があればすばらしい体験ができるのかをもっと研究すること。そして英語力。世界共通語として不動の地位を築いてしまった英語は、いまやできて当たり前の言語になってしまいました。少なくても観光案内所や接客業など顧客との接点になる場所では必須です。難しいことなんかしゃべる必要はありません。ごく簡単な英語がしゃべれれば済むのです。

日本の他にもいろいろ海外旅行をしている彼女は、日本のことはベタ褒めです。充実した公共交通機関、どこへ行ってもおいしい食べ物、世界に誇れる文化遺産、他では見ることのできない美しい自然、高機能で質の高い日本の製品、女性一人でも歩ける安全性・・・日本は旅行者を惹きつける魅力を多く備えています。彼女は比較的旅慣れていて日本のこともある程度知っているので、英語の通じない地域の個人旅行でもなんとかサバイバルできましたが、普通の人なら難しいだろうと言っていました。こんなにすばらしい国なのだから、みんながもっと英語ができればもっと多くの観光客が安心して旅行ができるのに・・・ととても悔しがっていました。普通の日本人が簡単な英語ができるだけで、海外からの旅行者の体験はまったく違ったものになります。


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プロフィール

divayoshiko

Author:divayoshiko
よりよい生活と仕事環境を求めて、日本の会社を辞めてオーストラリアに移住しました。IT技術者として生活を確立するまでの様子、日々の生活や仕事のこと、現地情報、オーストラリアや日本について感じることなどをつづっています。メルボルン在住。
Twitter @divayoshiko

これまでの歩み
2009年
4月  技術独立ビザで永住権取得
2010年
1月  東京からブリスベンに移住
2月  シドニーに移住
4月  ブリスベンに移住
5-6月 メルボルンに長期出張
2014年
2月  メルボルンに移住

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